ANAの運航間に整備士が出向かない体制はどうなっているのか
全日空は、国内線旅客便運航間に整備士が出向かない体制を、2016年9月1日から羽田、2017年2月1日から那覇、同年4月10日から千歳、成田、伊丹、関西、福岡、同年7月1日から中部、更に、原則として全国で導入しました。
これまでに指摘されていた以下の問題点は現在どのようになっているのでしょうか。
・安全マージンの低下 ・定時性 ・サービス(快適性)の低下
・現場各専門家が納得していない ・乗員、客乗、機側の作業者の負担
・ライン整備士として技量が上がるか ・その他の問題、勤務・健康
① 定時性については
国土交通省 特定本邦航空運送事業者に係る情報によると、「機材故障による遅延便 15 分を超えて出発した便」は、JALが16年上期379便 17年上期426便に対して、
ANAは16 年上期 301便 17年上期911便となっているのは注目に値します。
(17年下期データは現時点ではまだ出ていないため、上期による比較としました。)
② ヘッドセットオペレーター等を行うグランドハンドリング部門の危険事例
17年4月から毎月のようにラインの職場の事故・トラブルがあり、会社の注意喚起文書によると、12月までに164件発生。これでは年間200件(昨年は136件)を超えそうです。人身事故も10件発生しています。
特筆すべきは、出発時、作業者がいるのに機体が動いた事例があった事です。(16年12月19日ANA15便 17年1月16日ANA243便 17年5月2日ANA751便)幸い人身事故にはなりませんでしたが、いずれもプッシュバック完了チョックイン後、機体不具合発生時、ノーズギア付近に作業者がいる時の事例でした。
③ 飛行間で発見されずそのまま飛行した機体損傷事例
・2017年2月3日 羽田始発便出発前FWD CARGO DOOR損傷したがANA583便は気付かず松山へ飛行、その後松山発羽田行ANA584便、羽田発ANA565便も発見されず、高知着後発覚、 飛行不可のためキャンセルになるまで3便飛行しました。
・2018年2月1日 千歳空港発羽田行きANA50便、PAX搭乗直前、JGSの除雪車が後退中、同機左翼に衝突し翼端先端部分を損傷しました。(写真参照)しかし、飛行機はそのまま飛行、更に羽田でも発見されることなく、羽田発伊丹行きANA19便到着後発覚し、次便24便羽田空港行きは、この損傷のため欠航しました。
この二つの事例は、運航間に従来通り整備士が出向くことで、ヒューマンファクターのエラーチェーンを断ち切れた可能性があるという点で、忘れてはならない事例です。 担保されていた安全マージンの低下と言わざるを得ません。