整備連が勤務改善パンフレットを作成しました!

2016年11月15日 11:35

 2016年11月、航空連・整備連は、航空の安全を担う整備士が健康で定年まで働けることを願って、「勤務改善パンフレット」を作成しました。

貴重な資料も入り、職場の改善に役立つのではないかと、声が早くも出されています。

 グラフ・図表など全文(PDF版)は、以下をクリック、参照してください。

整備連の勤務パンフ(定年まで健康で働けますか?)rev13WEB用.pdf



以下はそのエッセンスです。


整備連:勤務改善パンフレット  航空労組連絡会

勤務表とおり働くと過労死に!! 

 早急な改善を!

日本の深夜労働者は労働者全体の約2割、その数は多くの業種で増 加にあります。

近年過労死等が多発し、大きな社会問題となっています。

平成25年度労災請求による過労死は2100件にものぼります。(13年前は1000件) 


ILOは1993(平成5)年、年次報告で過労死問題について、日本に警告を発しました。

ILO事務局長補などを歴任した堀内光子(6 7)さんは

「日本は労働時間の規制に関するILO条約を一本も批准し ていない。」と言う。


FAAからは整備士の疲労と安全について

ADV.CIRCULARが発行

整備士の疲労が業界の損害 として警鐘しています。(PDF版参照) 
1、疲労に関する基本的概念並びにそれが整備事業場もしくは整備士にどのように影響す るか。
2、航空整備士の疲労による脅威並びに防止対策のための疲労リスク管理(FRM)に関する 情報。
3、整備事業場においてFRMを実施するメリット。
4、安全管理システム(SMS)と統合する方法。

 疲労による脅威
        疲労は全ての整備作業を行う上で安全性を脅かす。
 深刻な疲労
        深刻な疲労は、直近の睡眠(24時間内で)からの時間と現在時刻に密接に関連している。
        24時間以内に8時間の睡眠を取っていなかったり、17時間以上起きていたり、
       深夜か ら早朝6時まで働いたりすることは、
       普通の人間でも深刻な疲労を引き起こす。
        作業中の怪我の発生率は、早朝時間帯シフトに比べて、午後シフト作業では約15 %増加し、
       深夜シフトでは28%増加する。
       労働時間数での怪我の発生率は、8時 間労働した後に劇的に増加する。
      12時間シフト労働では8時間労働者の2倍に、16時 間シフト労働では8時間労働者の4倍になる。
航空整備士の疲労の原因
       1、極度に長い覚醒状態にあった(16時間以上)。
       2、極度に睡眠時間が短いか、又は、劣悪な睡眠環境ではなかったか。
       3、いつまでも起きられない。
       4、健康を回復するための睡眠を阻害する情緒的、身体的、病的な問題がなかったか。
       5、睡眠の機会の大切さを軽視したり、見逃した。
       6、仕事又は人生の変化。
       7、基本となる仕事の流れがない。
       8、仕事が生命体として睡眠に誘われている時(生体リズム)時間帯と重なっている。   
       9、同じ作業を長時間し続ける。さらに、少人数、休憩不十分、暗い場所、過酷な気温 化での作業。
仮眠のすすめ
       仮眠は防止対策として有用である。
       夜勤前にとったり、深夜中の脅威を緩和する方法と しても有用である。
       整備の実作業の中でも午前3時にとった20分の仮眠で作業効率が改善された。
        40分 の仮眠で操縦士の注意深さを明らかに増大させ、失敗の減少と刺激に対する反応時間を
       短 くしている。
       同様な報告は管制官、トラック運転手でも報告されている。


1998年版 ICAO Training Manual(国際民間航空機構発行の訓練マニュアル)

和訳版より

1、    タイムプレッシャーの精神的負荷について
世界中の航空会社が、時間に追われる忙しさの中で、
整備現場でのエラーをいかに減らして いくか努力している背景に、航空会社(公共輸送機間)
特有の定時性の圧力は厳然として存在す るのである。
国際基準として、こうしたタイムプレッシャーがあることを認めた上で、
訓練や教 育を進めようという考え方が出されている。
2、    勤務について
第6章 航空機の整備及び検査におけるヒューマン ファクターの「6.4.22項」で次のように述べている。
「航空機の整備は夜間に行われることが多い。物心両面から人間は昼間にもっとも機敏であり、
夜は休息し、睡眠を取る事を好む。仕事上の要件からこのパターンが乱れると、作業の成績劣化
Performance Deficit)が生じる。
このことは、安全が技術者のエラーなしの成果に密接に結 び付いている航空機整備においては、
確実に問題を提起する。このダイジェストで議論している ような大部分の整備エラー事故において、
事故に寄与した不完全な整備作業は夜間シフトの作業 時間帯に行われていた・・・・」
3、    施設及び作業環境(高所作業、狭い空間での作業など)について
4、    騒音についての ヒューマントレーニングマニュアル
「高いまたは強い騒音は人間 の自律神経系に強い反応を引き起こす傾向がある。
その結果の一つは疲労である。コミニケーションのミスや誤 解は重大な結果を招く。」 


整備士のアンケートの声!

135名の整備士(ライン整備士は105名)に「日勤と 夜勤の比較」「作業環境」の質問から頂いた声は!
アンケート結果のグラフはPDFファイル参照願います。

整備作業は過労死認定要因の殆どが当てはまる。

【過労死の要因】
 厚生労働省のパンフより
労働時間
不規則な勤務
拘束時間の長い勤務
出張の多い業務
交替制勤務・深夜勤務
作業環境(温度、騒音、時差)
精神的緊張を伴う業務


職場のヒヤリハットは貴重なデータ

JLU労組が実施した 現場のヒヤリハット!
102名の整備士がリアルな体験を寄せています。
インシデント、怪我、事故につながる前に改善を!
【主なヒヤリハット】
【常に発生している事】
 ありすぎて覚えてない毎日がヒヤリしてますいつも綱渡り
見落とし。車両事故。LOGBOOK間違い等 全てヒヤリで済んでるが、 人が足りない、時間が無い現状では日常茶飯事
しょっちゅうあり忘れたたくさんありすぎて覚えていられない
多数あって書ききれない急ぎの業務車両運転中、日常業務でも多々
【身の危険に関する事】
適切な作業台がなくSHIPから降りるとき落ちそうになった
深夜での作業で作業台から落ちそうになった作業台使用時、手摺りが下がり危なく落下しそうになった
作業台で転びそうになった人がいないので1人で仕事をして色々危ない思いをした
☆B777MLGLUBSPOTで行なっていた際、DRAG BRACEから滑って落ちそうになった。ステップは周りになかった。 ☆JGSのペイトラクターにひかれそうになったことがある
その他【誤作業】【深夜帯】【人員不足】【忘れ・工具、書類、CBなど】
 夜勤の朝、集中力が落ちミスしそうになる時間に終われて勤務修了時の書類整理で抜けが出てくる
☆Toolや作業忘れ、署名忘れ。閉め忘れ、つけ忘れ等

ヒヤリハットの発生は夜間・勤務終了前に その多くが発生しています。 


【公益財団法人 労働科学研究所 佐々木司博士による学習資料から抜粋】


☆睡眠の量と睡眠の質について両方を検討することが重要

睡眠は様々な健康に影響を及ぼすことがわかっています。たとえば糖代謝やアルツハイマー 病などに関係しています。
2001年の過労死認定基準では睡眠時間が5時間以下だと影響を 及ぼすことがわかってきました。
また、米国男性約50万人の睡眠時間と死亡率調査があります。 睡眠時間が短くても(3時間未満)、
長くても(10時間以上)死亡率は同じです。睡眠の質 の劣化が健康に影響を及ぼすことがわかってきました。
睡眠は量と質の両方を考えることが大 切です。
☆疲労とストレスを理解 睡眠と裏腹の起きている時の覚醒が大切。
覚醒している時に考え、悩んで疲労やストレスが 生じる。従って、疲労・ストレスを理解すると健康の道を探れる。
☆疲労とは
Ⅰ群:ねむけ、だるさ、あくび Ⅱ群:いらいら、気が散る、考えがまとまらない Ⅲ群:肩こり、腰痛、頭痛
このⅡ群がストレスです。ストレスは疲労の中に入る。 日勤者はⅠ群からⅢ群へ高くなる。
交代制勤務者はⅡ群のイライラがまず高くなる。
☆疲労とストレスの関係 疲労⇒過労⇒疲弊⇒疾病に至る。これを疲労の進展性と言う。
疲労を進展させるのはストレスである。 矢印(⇒)がストレスで疲労から疾病へと進んでいく。だからストレス解消が必要。
☆ストレス要因にリズム障害 起床時刻を遅らすと問題が生ずる。 2時間以上リズムをずらすと疲労感が高くなる。
交代勤務者は毎日リズムがこわれる。 1週間でのリズムのずれは2日まで。 早朝勤務は精神的ストレスが関係。
遅番勤務後の睡眠も同様なストレス。
☆航空整備士のリズム障害 位相前進シフトである。(生体リズムは25時間で睡眠時刻を前にずらすのは大変)
休息に 適さない時刻に休息している。1日の内、休息するべき時刻と休息に適さない(働く)時刻が 決まっている。
19時付近は睡眠禁止帯。
☆[佐々木博士の新聞投稿] 人間には強固な生体リズムがあります。
脳の過熱を防ぐため人の体温は夜間に最も低くなり眠気が生じるようになっています。
だから昼間寝ようとしても睡眠の質は下がります。時刻の問 題はとても大事です。
夜勤・交代制勤務の航空整備士や看護師などはこうした生体リズムに反 して働くので疲労が回復しにくい。
こうした「健康リスク」に加え、事故につながる「安全リ スク」、社会とのかかわりが制約される
「生活リスク」の三つのリスクをはらんでいます。


勤務改善は急務

フランスの医療福祉労連からの報告によると、夜勤の労働者は平均寿命が7年短いと言われています。 

約100名の整備士の夜勤改善のアンケートから言えること

1、    定年まで健康で働ける自信がありますか?
 自信が:ない89名、ある10名、無回答6名です。
2、    どんな勤務改善が必要と思うか?(98名が回答を記述)
 夜勤そのものに対する意見 (夜勤を無くす、夜勤から外れる、夜勤を減らす、見切りをつけて退社)が37名。
夜勤に対する改善の意見 (仮眠制度、作業工数減、勤務時間短縮、インターバル確保)が86名。
  夜勤そのものが心身の健康を害していることは間違いありません。
 高齢化すれ ばその影響はさらに増します。「夜勤から外してもらう要望が可能な職場確保も重要」
 

トピックス

ANALTCでは新FOに絡んで、更なる勤務改悪が出されています。
基本パターンがDNN-HHの連続夜勤で、更に長時間の拘束時間です。
「とてもじゃないがやってられない!」「殺される!」の声が出ています。
夜勤回数:97.3回/年。(現行は73回)


整備職の勤務の特徴とあるべき姿(詳細はPDF版参照)

 1.労働者の働き方の現状 は
航空では・・・整備職では長時間拘束の夜勤・交代制勤務、積み上げた制度の切り崩し、
勤務協定の改悪による何でもありの勤務、出張など不規則勤務パターン、生産優先で健康無視の勤務
 2.航空労働者・整備職の勤務の特徴
 3.求められる勤務の改善 整備職のあるべき姿
  安全運航と働く者の健康が守れる勤務
   65歳まで働く前提であるべき姿を列記。
  勤務時間と時間帯のペナルティー=健康を維持し、安全確保できる勤務。
  出張=すべてが会社業務。
  試験=国家資格は会社業務。
  休憩=生産性の向上のためにも良質な休憩。
  有給休暇など=労基法の完全な遵守。
  公休=個人が自由に使える暦日。
  健康=定年までの健康確保。
  高齢=○歳以上の夜勤制限。
  女性=女性整備士としての権利。
  地位=航空従事者である整備士の地位向上。 

  航空従事者は「航空の安全の専門家」であり、その果たす役割は重要であ る。
同時にその役割をまっとうするためには、そこで働く労働者の健康・ 命・勤務・諸労働条件を
守ることと深い関係があることを指摘せざるを得 ない。儲け・生産性第一で「働く者の健康は考えない」と
豪語する会社対 応は安全にとって憂慮する事態となっている。
航空労働者の労働条件(特 に勤務)を保障するための法制化は急務となっている。 早急な勤務改善を勝ち取ろう!

                             航空連・ 整備連